2014年2月6日木曜日

「マイナスをゼロ」から「価値の創造」を 〜地域力!おっはークラブ〜

先週、1月30日に日本財団ビルで開催された地域力!おっはークラブに参加しました。
日本財団ビル

昨年6月に開催された徳島県神山町のNPO法人グリーンバレー大南理事長の講演以来の参加です。

おっはークラブ司会は「地域のミツバチ・井上貴至さん♪」



今回は、「バリアバリューの視点からユニバーサルな社会を創造する」を、経営理念に掲げる株式会社ミライロの垣内さんの講演でした。

株式会社ミライロの垣内さん

「障害は人ではなく、環境である」


垣内さんは、生まれつき「骨形成不全症」という骨が弱くて折れやすい病気(ご本人は魔法にかかっていると表現される)を抱え、車いすを利用されています。
子供の頃から、障害を否定して、ずっと自分の力で歩きたいと思い続けていた日々。
何度も味わった挫折感。
それでも社会と関わるなかで、ある時に気づいた、障害をもって車いすに乗っている自分だからこそ得ることが出来た気づきや発見は、障害というものをバリュー(価値)のあるものとして捉える発想だったそうです。

■印象的なはなし


【スクリーン表示などでの資料作成の気遣い】

 例えば、説明会やプレゼン時にスクリーンに映し出される資料。弱視の方のために、「白地にクロ」より「黒地にシロ」を基調にすると、まぶしさが抑えられて視認しやすくなる。

弱視児の教育的な視機能評価と配慮中野泰志/慶應義塾大学


【ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い】




 バリアをなくす、という発想は日本だけ。バリアフリーの発想は、マイナスをゼロにしただけ。特定の人のためにやっている。
 ユニバーサルデザインがグローバルスタンダード。学校の教科書でも使われている用語。障害者だけでなく、高齢者、小児者も含めたすべての人が使いやすいデザイン(※デザイン、という概念が大事)


【こんなのがユニバーサルデザイン】


ライター。マッチしかなかった昔、戦争で片手を失った兵士でもタバコが吸えるように考案された。実際、誰が使っても便利だった。


(c) .foto project

斜めドラム式洗濯機。腰の悪いお年寄りのために作ったら、これまた全員が便利なものになって洗濯機のスタンダードになった。



電動アシスト付き自転車。当初、足の弱い高齢者が自転車の漕ぎ始めの時にふらつくのが危ない状況を改善するために発売。高齢者にも売れたが、普段から自転車をよく使う主婦にも喜ばれた。



【バリアバリューとは】

 →会社の理念。バリアフリーはマイナスをゼロにするアプローチ。その裏には、「守ってあげなくてはいけない」という、暗黙の価値観。それは、違う。



【自分の一生】


・17歳で3回も自殺未遂
・入社した会社では営業担当。ブラックを通り越して漆黒企業(笑)。意外に、好成績をおさめた。上司に「車いすだから、顧客におぼえてもらえる。それは営業としては素晴らしいことだ」と言われ、新しい価値観に気づいた。
・発症の周期を計算すると、45歳くらいで終えるかもしれない。
・残り7380日。これを意識して積極的になれたのは、ここ数年のこと。
・人生の「長さ」は変えられないが、人生の「幅」は変えられる。
・自分の病気は遺伝する。兄弟も車いす。おそらく自分の子供も車いす。車いすでも楽しめる社会を実現したい。

【起業・ミライロという会社】


 →軌道にのるまで大変だったが、目的は明確だった。
 →資本金は700万円。それ以上に、取り組みに対して「共感」というカタチで支援してもらっていることに感謝。次々に紹介してもらっている。



【障害の捉え方】


障害=ハンデ?マイナス?不幸?
→歩けなかったから得られる経験がたくさんある

【日本の現状】


障害者に対しては、無関心か過剰の両極端。
さりげない心遣いを。
都内でもホームとのエレベーターが整備されていない駅がいくつかある。しかし、東京オリンピック決定後、未整備の全駅に予算がついて設置されることとなった。
実は日本はユニバーサルデザインの先進国。外国からの評価は高い。

・高齢者3101万人(24%)
・障害者788万人(6%)
・未満児315万人(2%)
上記の人の向こうには家族がいる。ビジネスとしても巨大市場の可能性。

【ユニバーサルデザインでロイヤルカスタマー】


 ユニバーサルデザインに対応した企業は少ない、5%以下。なので、リピート率が高い。企業戦略としても価値がある、そういう提案をしている。

【日本に求められるもの】


 →2020年東京オリンピックに向けて、東京のハードは整備されはじめている。
 →ハードを変えることよりも、ハードルを変えることを考える
 →ハードルとは、「ハート」のことである。
 →オペレーションが未熟。付け焼き刃的ななんちゃって◯◯が多い。
 →高齢者先進国はユニバーサルデザイン先進国でもある。



【企業との具体的な取り組み例】


 →パチンコのマルハンと一緒に、障害者でも楽しめる店舗を作っている。
 →視覚障害者の娯楽は少ない。せいぜいカラオケくらいだった。
 →スロットのように音がする機器を楽しむ視覚障害者がいる。
 

【ユニバーサルデザインはCSRではない】


 →ユニバーサルデザインがベースにあり、その上に経済性、その上に社会性がくるように考えている


■講演をおえて

障害者自身が営利事業を起こされ、大きな成果をあげているお話は、とても新鮮でした。
バリアフリー(マイナスをゼロ)ではなくユニバーサルデザイン(価値の創造)の発想でいくとビジネスとしても巨大市場になります。ドラッガー的発想ですね。
しかも国内だけではなく、ユニバーサルなのでグローバルな展開もアリです。
業績としてみえるカタチになるように企業へ提案することで、取り組みを広げていく。
結果として障害者を含めて、全員が住み良い社会が実現されていくということ。
こういう、社会的課題解決手法って素晴らしいです。

従来の企業と連携した社会的課題解決手法として、CSR的な発想からの展開(行政発の取り組みに多い)があります。基本的に「企業の持ち出しでお願いします。そのかわり行政が取り組みをPRしますから」という発想。
「御社が、社会的責任(CSR)を果たしてますよー」と行政がうたうと。
 例:我が社の社員は、手弁当で森林づくりに貢献しています(植樹祭とか・・・)
これって、なんかうまくいく(継続していく)気がしないんですよね。
ブームや単発で終わることが多いです。

あと、垣内さんのすごさとして、圧倒的なプレゼン力が挙げられます。
ご自分があとどのくらい生きられるかを数字にして表現されていたところは、真骨頂ではないでしょうか。
「きっとこの方となら、信頼のおけるビジネス、事業ができそうだ」と、納得させられる圧倒的な説得力があります。
それは、ある種「感動」と言い換えることもできます。
不覚にも、涙を流してしまいました。

長野始発の新幹線を使って、平日の朝8:30からのたった1時間の講演。
時間・お金・距離、そんなものを埋め尽くし、垣内さんという「本物」に出会えて、大きな収穫をいただけた、今回のおっはークラブでした。














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